バンコク、スクンウィットは、人種の坩堝と言われる。
私たちは、深夜を過ぎて、その街に到着した。
やはり、タクシーは、公的機関の乗り場でも、ボルのである。
結局、高速料金と、手数料という、名目で、500バーツほど、払った。
だが、声を掛けてくる、タクシーの勧誘では、これが、倍の1000バーツ以上になる。
帰りのタクシーは、メーターで、180バーツほどだった。
それでも、タクシー運転手に、声を掛けて、ハウマッチとか、タオライカップと、尋ねるのである。
野中が、もう、交渉に疲れて、私がした。
ゲストハウスは、一泊600バーツである。明日の、夜12時までだと、二日分になると言われて、とりあえず、一日分を払った。
チェンマイで、買った、パンと、水を飲んで寝た。
もう、どこにも、出掛ける気力は無い。
どうして、ここに来たか。
それは、格安航空券と、時間待ちのためである。
そして、この喧騒を、もう一度だった。
イスラム圏の人々、インドや、アフリカの人々、よく解らない人々を見るためである。
至る国の料理もある。
私が好きなのは、インドカレーの店である。
一人で頼んで、とんでもない量を出されて、驚いたが。
朝、私たちは、路地のタイ人向けの、出店に行き、お粥を食べた。
私は、エビ、野中は、魚である。
丁度よい量であり、朝の食事にぴったりである。
向かいの、出店の、オレンジジュースを買って、お粥の出来上がりを、待った。
オレンジジュースは、搾り立てである。
甘くて、美味しい。
さて、私たちの、お粥が出た。
箸もつけてくれたが、スプーンで食べる。
日本人とは解らないかと思いきや、解るのである。
隣の店のおじさんが、豚足の揚げたものを、見せて、どうだと言う。
朝から、豚足は、無理だし、私は、食べられない。
笑顔で、断る。
一杯、40バーツ、約130円程度である。
そのまま、水を買い、ホテルに戻った。
野中は、自分の取材のために、出掛ける。
私は、夜の12時まで、何をするかを、考える。
まず、199バーツの、フットマッサージをすることにする。
その辺りで、一番安い店である。
しかし、他の店も、覗いて、料金と、内容を確かめる。
前回、イサーンから来た、女の子にしてもらって、上手だったので、矢張り、安い店に行くことにした。
その子は、いなかった。辞めたのか、店を変わったのか、尋ねる言葉が、出ない。
新しい、女の子が、ついた。
何処の出身と、尋ねると、ノーンカーイという。イサーンではないか。矢張り、出稼ぎである。家族は、皆、ノーンカーイにいるという。
フットマッサージである。
巧い。
一時間コースであり、私は、昼ごはんを食べた後、その子に、タイマッサージをしてもらおうと思った。
少し、ぶっきらぼーであるが、巧いので、いい。
英語は、少し、日本語は、全然解らない。それが、いい。私の英語が、通じるのである。
帰りに、また、昼過ぎに、来ると言っうと、オッケーと答えた。
次は、タイマッサージでと言う。
一度、ゲストハウスに戻り、足を洗って、すぐに、インド料理の店に出掛けた。
店の前のケースに入っている、カレーを指差して、チキンカレーと、野菜カレーを選んだ。そして、ご飯である。
ありがとう、を繰り返す、ボーイが、相手をしてくれた。ただし、ありがとうが、喧しい。それに、イントネーションが、変なのだ。
テーブルの上にある、水のボトルから、勝手に水をコップに、注いで飲んだ。
中々、持ってこない。
漸く、カレーが運ばれて、驚いた。
二人分もあるものが、二皿である。そして、大盛りのご飯。
見るだけで、胸が、一杯になる。
まず、チキンカレーから、手を付けた。
旨い。
そして、野菜カレーである。
辛くて、旨い。
ご飯と、交互に食べる。
しかし、量が減らない。
ついに、食べるのを諦めて、持って行くことにした。
テイクアウトだったか・・・と、思いつつ、一人のボーイに声を掛けて、小さな声で、テイクアウトと言った。
ボーイが頷いて、カレーの皿を持った。
ご飯もと、私が言う。
ボーイは、それを、小さなビニール袋に詰め始めた。
その時である。
最初のボーイが、そのボーイと、何か言い合った。
私のカレーのことかと思いつつ、見ていると、別なことらしい。
二人の争う声が、響いた。
一人の、タイ人の、ボーイが、中に割ってはいる。
今にも、殴り合いになりそうなのである。
皆、汗を流して、仕事をしている。
忙しいのだ。
私のカレーを持っていったボーイが、私を見て、精一杯の、笑顔である。
その顛末を見ていたので、私は、笑顔が作れない。
清算する時も、そのボーイを呼んだ。
そして、その時、彼に、チップを渡そうと思った。
170バーツである。
おつりの出ないようにと、財布を確認しつつ、チップの額を考える。
えーと、彼が、私の紙幣を、決めてくれた。
そして、受け取り、去ろうとしたので、私は、20バーツ三枚を出して、チップと、言った。彼は、スッとそれを、受け取った。
スマートである。
これで、少しは、気が収まればいいと思った。
全部で、230バーツ、約800円程度である。
それから、一時間ほど、ベッドで、休んだ。
夜の飛行機だと思うと、眠ることが出来ない。飛行機で、眠らなければと思うのだ。
少し、うとうとした。
時計を見ると、三時である。
再度、マッサージ店に行く。
歩いて、3分程度の路地である。
先ほどの女の子がいた。
笑顔がないのは、イサーンの人の特徴である。
客は、誰もいない。私だけである。
奥のブースに案内された。
普通は、着替えを渡されるが、私は、そのままが、マッサージの姿である。
そのまま、そこに寝ろという感じである。
マットに、寝ていると、女の子が来た。
足から始める。
タイマッサージの特徴は、足である。徹底的に足を揉む。
足が楽になると、体も楽になる。
力も強い。満足である。
これなら、オイルマッサージでも良かったと、思う。
次に来た時、オイルマッサージをすると言うと、彼女は、そけっなくオッケーと答えた。
普通なら、いつ来るのとか、何とかかんとか言うが、無愛想である。
しかし、それが、また、いい。
一時間を終えて、料金を払う。
またね、と言うが、ウンと頷くのみ。
本当に、また、来てやろうと、思った。
外に出ると、酷い音である。
スコールだ。
見る見る街の中が、水で溢れる。
傘も無く、さて、どうするか。
目の前の、インターネットカフェに入ることにした。そこで、雨宿りである。
約、30分ほど、自分のホームページを見ていたが、雨が止まない。
しょうがなく、料金を払い、外に出た。
走るしかない。
私は、軒先を走って、ゲストハウスに戻った。
それでも、びしょびしょに、濡れた。
すぐに、服を脱ぎ、シャワーを浴びて、窓から外を見た。
水かさが増して、街中は、水で溢れている。
水を漕ぐように、人が歩く。
私は、そのまま、ベッドで眠った。
野中が帰る、夜の九時まで、寝ていた。
いよいよ、帰り支度である。
野中は、スコールで、足止めされて、遅くなったという。
二人とも、疲れのせいか、口数少なく、帰る準備をした。
|
|