木村天山旅日記

 

タイ旅日記 平成20年6月 

 

第14話

バンコク、スクンウィットは、人種の坩堝と言われる。

私たちは、深夜を過ぎて、その街に到着した。

 

やはり、タクシーは、公的機関の乗り場でも、ボルのである。

結局、高速料金と、手数料という、名目で、500バーツほど、払った。

だが、声を掛けてくる、タクシーの勧誘では、これが、倍の1000バーツ以上になる。

 

帰りのタクシーは、メーターで、180バーツほどだった。

それでも、タクシー運転手に、声を掛けて、ハウマッチとか、タオライカップと、尋ねるのである。

野中が、もう、交渉に疲れて、私がした。

 

ゲストハウスは、一泊600バーツである。明日の、夜12時までだと、二日分になると言われて、とりあえず、一日分を払った。

 

チェンマイで、買った、パンと、水を飲んで寝た。

もう、どこにも、出掛ける気力は無い。

 

どうして、ここに来たか。

それは、格安航空券と、時間待ちのためである。

そして、この喧騒を、もう一度だった。

 

イスラム圏の人々、インドや、アフリカの人々、よく解らない人々を見るためである。

 

至る国の料理もある。

私が好きなのは、インドカレーの店である。

一人で頼んで、とんでもない量を出されて、驚いたが。

 

朝、私たちは、路地のタイ人向けの、出店に行き、お粥を食べた。

私は、エビ、野中は、魚である。

丁度よい量であり、朝の食事にぴったりである。

 

向かいの、出店の、オレンジジュースを買って、お粥の出来上がりを、待った。

オレンジジュースは、搾り立てである。

甘くて、美味しい。

 

さて、私たちの、お粥が出た。

箸もつけてくれたが、スプーンで食べる。

 

日本人とは解らないかと思いきや、解るのである。

隣の店のおじさんが、豚足の揚げたものを、見せて、どうだと言う。

朝から、豚足は、無理だし、私は、食べられない。

笑顔で、断る。

 

一杯、40バーツ、約130円程度である。

そのまま、水を買い、ホテルに戻った。

 

野中は、自分の取材のために、出掛ける。

私は、夜の12時まで、何をするかを、考える。

 

まず、199バーツの、フットマッサージをすることにする。

その辺りで、一番安い店である。

しかし、他の店も、覗いて、料金と、内容を確かめる。

前回、イサーンから来た、女の子にしてもらって、上手だったので、矢張り、安い店に行くことにした。

 

その子は、いなかった。辞めたのか、店を変わったのか、尋ねる言葉が、出ない。

新しい、女の子が、ついた。

何処の出身と、尋ねると、ノーンカーイという。イサーンではないか。矢張り、出稼ぎである。家族は、皆、ノーンカーイにいるという。

 

フットマッサージである。

巧い。

一時間コースであり、私は、昼ごはんを食べた後、その子に、タイマッサージをしてもらおうと思った。

 

少し、ぶっきらぼーであるが、巧いので、いい。

英語は、少し、日本語は、全然解らない。それが、いい。私の英語が、通じるのである。

 

帰りに、また、昼過ぎに、来ると言っうと、オッケーと答えた。

次は、タイマッサージでと言う。

 

一度、ゲストハウスに戻り、足を洗って、すぐに、インド料理の店に出掛けた。

 

店の前のケースに入っている、カレーを指差して、チキンカレーと、野菜カレーを選んだ。そして、ご飯である。

 

ありがとう、を繰り返す、ボーイが、相手をしてくれた。ただし、ありがとうが、喧しい。それに、イントネーションが、変なのだ。

 

テーブルの上にある、水のボトルから、勝手に水をコップに、注いで飲んだ。

中々、持ってこない。

漸く、カレーが運ばれて、驚いた。

二人分もあるものが、二皿である。そして、大盛りのご飯。

見るだけで、胸が、一杯になる。

 

まず、チキンカレーから、手を付けた。

旨い。

そして、野菜カレーである。

辛くて、旨い。

ご飯と、交互に食べる。

しかし、量が減らない。

 

ついに、食べるのを諦めて、持って行くことにした。

テイクアウトだったか・・・と、思いつつ、一人のボーイに声を掛けて、小さな声で、テイクアウトと言った。

ボーイが頷いて、カレーの皿を持った。

ご飯もと、私が言う。

 

ボーイは、それを、小さなビニール袋に詰め始めた。

その時である。

最初のボーイが、そのボーイと、何か言い合った。

私のカレーのことかと思いつつ、見ていると、別なことらしい。

 

二人の争う声が、響いた。

一人の、タイ人の、ボーイが、中に割ってはいる。

今にも、殴り合いになりそうなのである。

皆、汗を流して、仕事をしている。

忙しいのだ。

 

私のカレーを持っていったボーイが、私を見て、精一杯の、笑顔である。

その顛末を見ていたので、私は、笑顔が作れない。

 

清算する時も、そのボーイを呼んだ。

そして、その時、彼に、チップを渡そうと思った。

 

170バーツである。

おつりの出ないようにと、財布を確認しつつ、チップの額を考える。

えーと、彼が、私の紙幣を、決めてくれた。

そして、受け取り、去ろうとしたので、私は、20バーツ三枚を出して、チップと、言った。彼は、スッとそれを、受け取った。

スマートである。

これで、少しは、気が収まればいいと思った。

 

全部で、230バーツ、約800円程度である。

 

それから、一時間ほど、ベッドで、休んだ。

夜の飛行機だと思うと、眠ることが出来ない。飛行機で、眠らなければと思うのだ。

少し、うとうとした。

 

時計を見ると、三時である。

再度、マッサージ店に行く。

歩いて、3分程度の路地である。

 

先ほどの女の子がいた。

笑顔がないのは、イサーンの人の特徴である。

客は、誰もいない。私だけである。

奥のブースに案内された。

普通は、着替えを渡されるが、私は、そのままが、マッサージの姿である。

そのまま、そこに寝ろという感じである。

 

マットに、寝ていると、女の子が来た。

足から始める。

タイマッサージの特徴は、足である。徹底的に足を揉む。

足が楽になると、体も楽になる。

力も強い。満足である。

これなら、オイルマッサージでも良かったと、思う。

 

次に来た時、オイルマッサージをすると言うと、彼女は、そけっなくオッケーと答えた。

普通なら、いつ来るのとか、何とかかんとか言うが、無愛想である。

しかし、それが、また、いい。

 

一時間を終えて、料金を払う。

またね、と言うが、ウンと頷くのみ。

本当に、また、来てやろうと、思った。

外に出ると、酷い音である。

 

スコールだ。

 

見る見る街の中が、水で溢れる。

傘も無く、さて、どうするか。

目の前の、インターネットカフェに入ることにした。そこで、雨宿りである。

 

約、30分ほど、自分のホームページを見ていたが、雨が止まない。

しょうがなく、料金を払い、外に出た。

走るしかない。

私は、軒先を走って、ゲストハウスに戻った。

それでも、びしょびしょに、濡れた。

 

すぐに、服を脱ぎ、シャワーを浴びて、窓から外を見た。

水かさが増して、街中は、水で溢れている。

水を漕ぐように、人が歩く。

 

私は、そのまま、ベッドで眠った。

野中が帰る、夜の九時まで、寝ていた。

 

いよいよ、帰り支度である。

 

野中は、スコールで、足止めされて、遅くなったという。

二人とも、疲れのせいか、口数少なく、帰る準備をした。