天山旅日記
ベトムへ
平成20
10月
 

第22話

ホーチミン・サイゴンにて詠める歌

 

 

サイゴンの 川辺に祈る 追悼の 波立ち騒ぐ 飛沫吹き上げ

 

流れ行く サイゴン川に 追悼の 流す涙に 風渡るかな

 

サイゴンの 風渡るらし 川沿いの 船の行き来を 和やかに見る

 

渡し舟 行き交う波の 飛沫には 流れの速さ 悲しくもあり

 

 

雷の とどろき渡る サイゴンの 川辺の空が 明け開けゆく

 

 

ベトナムと 風の有様 変われども 人の生き様 変わることなし

 

歴史をば 知るということ その国の 人の心を 知ることなりと

 

 

今日食べる ことのみありて 生きること 逞しき人 溢れる如く

 

生き抜いて とにかく生きて 生き抜いて この時の世を 味わいつくす

 

 

歴史をば 生きるは我と 気づくとき 目の前のもの 光輝く

 

旅をする ことを旅する 旅もあり 屋台のフォーの 淡き味なり

 

人により 人は心を 取り戻す 善き人もそれ 悪しき人も

 

 

故郷を 異国の町で 思うなり それ生きるに 変わることなし

 

ホーチミン 立ち去りがたく 後ろ髪 曳かれる如く 後振り返らず

 

平和をば 行進した人 ベトナムの 今を知ること なくて安穏

 

 

追悼の 慰霊の所作の 床しさを もののあわれに 我は 見るなり