木村天山旅日


 

  バリ島再考の旅
  
平成21年
  2月
 

 第3話

一度、ホテルに戻り、夕食時に、再び、テラハウスに出掛けることにした。

歓迎の食事会である。

 

三時間ほど、ホテルで、ゆったりと過ごした。

 

一度、ホテル並びの店に、水を買いに出た。

大型のペットボトルで、4000ルピアである。

しかし、確か、市場では、3000ルピアで買ったはずと、思いなおした。

 

バリ島では、観光客と見ると、必ずボラれる。

また、観光客用の、値段がある。

道で、売っている物も、200ルピアといわれて、250ルピアと、言い直されることも、多々あり。

 

安い物ならば、しょうがないと思うが、高い物は、交渉しなければならない。

 

後で、また、そのことについて、書くことにする。

 

その時、決して、日本円に直しては駄目。日本円に直すと、すべてが、安く感じられるからだ。

 

通り雨

幾度となくも

通り雨

バリ島潤す

これが雨季なる

 

川の音

昼夜変わらぬ

流れあり

耳鳴りの如く

何も音いらず

 

緑にて

浮かぶ如くに

花咲けり

咲いては落ちて

咲いては落ちる

 

二人が、バイクで迎えに来た。

マデさんと、マルタさんだ。

それぞれのバイクの後に乗り、テラハウスに出掛けた。

 

マデさんの、奥さんが、料理を作る。それを、奥さんのお姉さんが手伝う。

その、奥さんのお姉さんの、一人娘は、ジャカルタの医大で、学んでいる。その、学費を、女手一つで、賄っている。

夫が亡くなり、妹の側に住んでいる。

それで、私たちとも、交流するようになった。

 

味付けは、私達の好むものばかりである。

ホテルの厨房で、働く、マデさんの奥さんのお姉さんが味付けするという。

 

食事は、男達だけである。

女達は、それを手伝う。

一緒に食べたことが無い。

それが、礼儀らしいので、私も何も言わない。

確かに、私達の食べる料理は、ご馳走である。お祭りの時のようだと、思う。

 

主食は、米であるから、日本と同じ。ただし、米の種類が違う。

パサパサしている。タイ米に似る。

味と、香りも違う。それでも、米は米。

おかずと、米を食べるというのは、日本と同じ。

 

おかずが無い時は、塩などをかけて食べるという。

 

バリ島の人は、家族で食事をするという感覚がない。

食べたい時に、食べる。

 

だから、私達と食事をするのは、特別なのである。

 

お姉さんが作った、ケーキを頂き、今回は、アイスクリームまで、用意してあった。

本当に、ご迷惑なことだろうと、思う。

でも、皆、楽しそうで、嬉しい。

 

マデさんの、娘と、息子に、僅かなお土産を渡す。

娘さんは、中学二年である。

 

その娘さんが、明日の、ガムラン公演、初出演で、レゴンダンスを踊るというから、それでは、明日、アナンガサリ楽団の演奏を聴くことにした。

というより、一度、共演する、アナンガサリ楽団の演奏を、お客として、聴いてみたいと、思っていたから、丁度良い。

 

食事を終えて、また、バイクで送って貰った。

 

満腹感と、飛行機の疲れが出て、早々に、ベッドに着く。

酒も、飲みたくない。

 

疲れると、覿面に、酒が飲みたくなくなるのだ。

ただ、あまり早く寝ると、夜中に目覚める。

矢張り、深夜二時に目覚めた。

 

部屋の前の、椅子に腰掛けて、深夜のバリ島の風を、楽しむ。

 

これが、何とも言えずに、考え深くなる。

旅の間、一切の本は、読まないから、その分、考える。

考えが、言葉になる。それを、書くこともしない。

そのまま、空に、散らされる。

 

手書きから、ワープロ、そして、パソコンに変わったが、私は、何も変わっていない。ただ、余計な理屈を考えるようになった。

実に、馬鹿馬鹿しいものである。

 

だから、歌を詠む。

それも、ただ、流れる如くに詠む。

書き留めて、どこかに書いて、そのまま、消える。

残すという、こともしない。

死後、すべて、捨てられてよい。

 

もう一度、ベッドに着いたのが、朝の四時である。

 

二時間寝て、目覚めた。

六時である。

朝日を見る。

 

太陽の

光差し込む

驚きは

朝の風射る

バリ島の光

 

今日は、何もしない、一日である。

 

旅行は、ただでさえ疲れる。

無理すると、帰国した後で、大変になる。だから、無理はしない。

夜に、アナンガサリ楽団に行くだけである。

 

私の旅の楽しみは、マッサージである。

だが、バリ島のマッサージは、オイルマッサージが主流で、下手な人に当たると、覿面、疲れるから、よほど、注意して、決める。

 

ホテル沿いに、マッサージの店が多数あるが、今一つ、乗り切れない。

一時間の、オイルマッサージは、5万ルピアである。

ゼロを、二つ取り、500円。

タイマッサージで、安いのは、約300円である。

タイマッサージは、タイ式となっていて、検討がつくが、バリ島のオイルマッサージは、検討がつかない。

当たり外れが、大きい。

 

飛行機の足の疲れは、矢張りマッサージであるがと、思いつつ、水を買いに外に出た。

ホテル近くの店に行く。しかし、例の高い店ではない。

二子の姉妹のいる、店に入った。

4000ルピアと言うので、市場では、3000だと言うと、じゃあ、3000でいいと言う。

矢張り、言ってみるべきである。