第3話
ここでは、外国人が、何かして人が集まると、警察が来て、尋問されます。色々と、聞かれて、面倒なことになります。
皆、貧しいから、一斉に集まります。すると、混乱して、必ず警察が来ます。
延々として、くどい説明が終わらないのである。
要するに、ヤンゴンでの支援活動は、政府の気に入らないことなのであり、それをすることは、大変なことで、危ないことなのである。
だから、今、社長が、ミャンマーで、三本の指に入る、高僧に相談すると言う。
社長は、すぐに電話を掛けた。
長い電話である。
そして、今すぐに、行きましょうということになった。
その、高僧の寺に出向いて、指示を仰ぐということだ。
そんな、大袈裟な・・・
私は、ウーンと、考えたが、皆が立ち上がり、社長が車を出すと言う。
確かに、これは、何か知ることになり、また、勉強になると、流れに従った。
社長の車の、後部座席に、私とコータが座り、助手席に、僧侶が乗った。
15分くらいと言ったが、30分は、かかったと思う。
漸く、その寺に到着して、高僧のいるという、建物に、向かった。
社長と僧侶、私達が続く。
高僧の部屋は、広く、その中にも、仏を奉る祭壇がある。
まず、その仏に礼拝し、更に、高僧に、礼拝するという、礼儀である。
若い僧は、高僧の足元に、額をつけて、礼拝していた。
社長と、高僧が、真剣に話し合うのを、傍で、黙って聞いていた。
若い僧も、黙っている。
私は、テレビに目をやった。
その高僧が、写っている。
暫く、話し合いが続き、結果、政府の許可を取るということになった。
高僧が言ったのだ。
明日の朝、ここに来て、その許可書を持って、一番困っている村の、人々に、支援物資を渡すということになった。
すると、高僧が立ち上がり、テレビの傍に行き、画面を指して、なにやら言う。
多くの僧たちに、説教をしているようである。
自分の写された、テレビを、繰り返し流していたのである。
そして、私達に、自分の載った記事も、渡した。
高僧。
そのイメージとは、遠い。
申し訳ないが、ヤクザの雰囲気である。どうしても、そのように、感じてしまう。
僧侶というものに対する、イメージが、持てないのである。
しかし、若い僧は、ハッハーと、ひれ伏すように、言葉を聞いている。
これが、ミャンマーの高僧なのであろう、きっと。
私は、慣れていないだけだと、肯定的に、捉えることにした。
その時の、話は、翌朝、もう一度、ここに来て、政府の許可を受けた書を貰いに来るということで、終わった。
そして、その村に、僧侶を差し向けるとも言う。
ここのことろを、覚えておいて欲しい。
後で、段々と、話が違ってくるのである。
さて、高僧との、会見を終えて、再び、ホテルに戻ることになった。
その前に、小便がしたくなり、トイレを尋ねた。
若い僧が、案内してくれた。
真っ暗な場所に、トイレがあり、更に、トイレも、真っ暗である。
えっーーー
ここで、するの。
ウンコでないから、いいものの、暗くて、何も見えない。
外から光を、利用して、何とか、便器に目掛けて、小便をする。
コータも、一緒だった。
大丈夫、と、コータに声を掛けた。
コータも、絶句している。
後で、コータ曰く、ああして、小僧さんたちを集めて、指導している偉いお坊さんとして、皆の尊敬を受けているが、トイレに電気もつけていないようなら、程度が知れる。
私も、同感であった。
しかし、あれが、当たり前なのだろう、きっと。
それに、ミャンマーの僧たちは、午後を過ぎると、何も食べない。水を飲むことだけ、許されている。だから、糞も、あまりしないのだろうと、憶測した。
さて、ホテルに着いて、明日の朝、八時半に、寺に行くということで、社長は、私一人で、行ってもよいと言うが、ただ、黙って頷いたのみ。
事の次第を、十分に考えたいと思った。
若い僧も、朝に来ると言って、帰った。
部屋に戻り、シャワーを浴びるが、停電で、温シャワーにならず、水シャワーである。
私は、水シャワーが嫌いで、苦手である。
しかたなく、下半身から、徐々に、上半身に上げてゆく。
水の温度に慣れるまで、足元に、水をかけている。
冷たいというのが、嫌なのである。
体が、しき締まるという、問題ではない。
心臓に悪いのだ。
シャワーを浴びて、コータと、話し合った。
さて、どうするか。
しかし、どうするも何も、ここまで、話が進んだのである。
明日の朝、寺に行くかどうかを、話し合った。
私は、行きたくない。コータも、行きたくない。
それでは、タンブン、つまり布施を渡して、社長に、行って貰おうということになった。
あらかじめ私達も、スムーズ支援出来るとは、思っていなかったが、何となく、観光しているように見せて、手渡しで、渡して、すぐに、その場から、離れればいいと、思っていた。
ここまで、話が、大袈裟になると、戸惑う。
停電が長く続き、エアコンも、扇風機も、駄目。
部屋の中が、蒸し風呂のようになってゆく。
私は、部屋のドアを開け放した。
それしか、方法が無い。
ちなみに、窓は、廊下側にある部屋である。外に向かっての窓は無い。
兎に角、彼らの流れに沿って行こうということで、次は、夜の食事である。
若い僧を、食事に誘ったが、先に書いたように、午後からは、何も口にしない戒律であるから、遠慮した。
考えるのが、面倒で、ガイドブックを見て、近くにある、インドカレーの店にした。
地図を頭に入れて、ホテルを出た。
10分程歩いて、目指す店を見つけた。
インドカリーと、英語で、書いてある。
辛さと、塩気の効いた味で、美味しかった。
体が疲れているせいもあり、味が濃い目でよかった。
お代わりをして、二人で、7800チャットである。780円。200チャットのお釣りを、そこで働く、中学生くらいの少年に渡した。
後は、寝るだけである。
酒も飲みたくない。
私も、コータも、非常に疲れた。
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