木村天山旅日

  ヤンゴンへ
  
平成21年3月 

 

第7話

ヤンゴンのダウンタウンの比較的大きな通りでは、どこでも、路上で物売りがいる。

何から、何まで、売っている。

面白いのは、電話を掛けることの出来る店まである。

国際電話は、掛けられない。国内専用である。

 

私は、ほとんどを、路上の物売りから、買った。

特に、果物である。どれも、これも、美味しい。

コータは、すいかを食べて、当たったが、私は、全然平気だった。

 

また、路上での、屋台では、ほとんどの物が食べられる。

麺類は、様々な種類がある。

目の前で、それを、用意してくれる。

ただし、あまり、お勧めできないのは、実に、不衛生なのである。

しかし、それが、当たり前なので、何のことは無い。日本の衛生観念を、失うとよい。

 

ただし、注意は必要である。

様々な、細菌が溢れている。

今、最も、恐いのは、新型インフルエンザである。私は、予防用に、新しい薬を、持参していった。使用することは、なかったが、持っているだけで、安心した。

コータは、タミフルを、十錠、病院から貰ってきた。

 

二日目の夜の食事を、私たちは、近くの日本料理屋で、食べることにした。

意外なことに、日本料理の店が多いのである。

 

さて、どんなものかと、出掛けた。

名前は書かないでおく。

 

暖簾のかかる店である。

店内も日本風にしてある。

 

一つ一つの部屋の前にも、暖簾がかかっている。

その一つに、案内された。

従業員は、ビルマの人である。

 

やや不安定な、日本語であるが、対応も、日本語である。

 

メニューには、寿司をはじめ、多くの日本的料理がある。

だが、その値段は、高い。

 

料金を見て、私は、マーボー豆腐定食にした。コータは、鶏肉のソテー定食である。

日本料理屋に来た意味がないようだが、味付けは、日本的である。

 

支払いの時に、その額は、それ以上の額になった。

つまり、税金と、サービス料が、加算される。

 

一万チャット近くになった。

つまり、千円である。

ミャンマーでは、非常に高い料金だ。特に、私たちには、である。

 

女の店員に、尋ねた。

地元の人も、来ますか

はい、来ます

日本人も

日本人も、沢山来ます

と言う。

 

屋台で、食べると、その十分の一の価格であるから、どんなに、それが、高いのかが解る。

 

店を出て、ゆっくり歩いて、ホテルに戻る。

路上では、屋台が盛んである。

 

ある場所に来ると、人だかりである。

私たちも、足を止めた。

どうしたのかと、見ていた。

 

一人の、ジュース売りの、インド系のおばさんが、何やら、大声で、怒鳴っていた。

一旦、騒ぎが収まったようであるが、おばさんは、興奮が冷めないようである。

 

コータが、近くの、物売りの若い女に、英語で、声をかけた。

すると、向こうも、英語で、答える。

男同士の喧嘩があり、それを、おばさんが、止めに入ったと言う。

 

一人の男が、おばさんに、何か言った。すると、おばさんは、また怒鳴り声を上げた。すると、その男は、手錠をポケットから、取り出して、おばさんを、殴りかかりそうになった。と、一人の男が、それを、止めた。

 

驚いた。

手錠で、殴るという行為である。

 

私のビルマに対する、イメージが、変わった。

決して、穏やかで、優しい人たちではない。

 

この街の人々の表情を見ていると、いつも、一発触発なのである。

いつ、何が起きても、おかしくないほど、皆、苛立ちがあるように、見える。

何かに、苛立っているのである。

 

インド系と、中国系の人が多いが、ビルマ人も、大勢いるはずである。

 

ビルマというのは、ビルマ人の国ということである。

それが、軍事政権になり、ミャンマーと、国名を、変えた。

要するに、ビルマ人だけではなく、多くの民族がいるということだ。

 

未だに、赤カレン族たちは、反政府活動を繰り返して、武力闘争を、行っている、地域もある。

 

それは、以前は、色々な部族があったが、軍事政権が、武力で制圧したり、また、懐柔したりして、今は、一つのみ、残っている。

 

何かで、締め付けておかなければ、国民が、めちゃくちゃになるということも、有り得る国なのである。

それが、今は、軍である。だが、それをいいことに、独裁政権である。

 

アウナサン・スチーさんが、先頭に立ち、民主化を求めてから、15年が過ぎる。

民主化は、全く、可能性が立たない状態である。

 

ヤンゴンでは、第二の民主化運動を、求める声がある。

 

つまり、それは、アウンサン・スチーさんとは、別の動きである。

 

以下、私が、聞いた話である。

 

アウンサン・スチーさんを、支援していたが、彼女は、政権を批判し、すべて、政権に対して、否定する。歩みよりも無い。

政権は、実に悪いが、それでは、アウンサン・スチーさんが良いかといえば、それも、違う。

 

国民は、5年待った。しかし、何も変わらない。

そして、10年待った。それでも、何も変わらない。

今、15年を経た。それでも、何も変わらない。

もう、国民は、食べて行けない。

 

軍政府も悪いし、アウンサン・スチーさんも、期待出来ないのである。

 

共に、足りないものは、経済感覚である。

全く、両者は、経済というものを、理解していない。

今、世界は、経済によって、結ばれている。それに、参加出来ないでいる。

それが、問題である。

 

ちなみに、ミャンマー軍政を、後押ししているのは、中国である。

 

私の、実感として、ミャンマーは、果物などが、豊富である。それを、輸出して、外貨を稼ぐことが、考えられないのかと思う。

 

だが、軍政は、売春を、見て見ない振りをして、外貨を稼ぐ。

 

そこで、売春の実態を紹介する。

これは、タイで、出版されている、ある雑誌のからの、情報を元に書く。

 

私は、マッサージをしたいと思ったが、その大半が、ピンク系である。売春がついている。

真っ当なマッサージを受けるとしたら、高級ホテルに、併設されている、マッサージ店に行くべきなのである。しかし、それは、価格が高い。

だが、恐るべきは、そんなホテルでも、売春が、軽々と出来るシステムがある。