木村天山旅日記

  ラオス・ルアンパバーン
  
平成21年6月 

 

第2話

ルアンパバーンは、1995年、街全体が、世界遺産に登録された。

それは、仏教寺院のある街、ルアンパバーンであった。

 

メコンの流れと、その風情は、一朝一夕に作られるものではない。

 

1975年の、社会主義革命で、仏教が否定された時、80を超える寺院の存続が、危うくなった。

しかし、20年後の、世界遺産に登録されることにより、伝統ある、托鉢の行事が、俄かに、活況をもよおした。

 

政府も、否定しなかった。

 

それから、街が、どんどんと、出来上がる。

つまり、観光客のための、街造りである。

 

街の中心は、ゲストハウスで、占められるほどである。

ただし、ホテルと、ゲストハウスの、違いは、部屋数によるものである。

 

私は、あらかじめ、ゲストハウスを決めて、トゥクトゥクの運転手に伝えた。

 

中心部から、やや西にある、ゲストハウスを選んだ。

メインストリートより、安いからである。

 

それでも、比較的、高い値段のゲストハウスにした。

 

少し、小太りのおばさんが、経営していた。

二泊の予定である。

 

二泊で、21ドルである。

部屋は、ダブルベッドがある、広めの部屋で、エアコン、温シャワーである。

 

ちょうど、オフシーズンでもあり、お得な料金だった。

 

二泊三日である。

しかし、私には、長い、時間だった。

 

まず、一度、着替えて、エアコンで暑さをしのいだ。

しばらく、ぼっーとしていた。

 

やるべきことは、メコン川での、慰霊と、衣服支援である。

しかし、全く、検討がつかない。

 

トゥクトゥクで、通った時に見た、裸足の男の子がいた場所に、出向いてみようと思った。

 

十足ほど、子供用の、靴やサンダルを持っていたからである。

 

小さい方のバッグに、詰めて、出掛けた。

 

通った道を、戻ってみた。

街中に入ることになる。

こういうのを、暗中模索という。

 

足の向くままに、歩いて、ひとつの細道に入った。

そして、目に入ったのが、裸足の男の子である。

 

ボーイと、呼んで、おいでおいでをした。

すると、男の子は、少し恐る恐る、近づいて来る。

 

私は、彼に合う、サンダルを出した。

そして、彼の足元に、差し出すと、何か言う。

雰囲気で、それを、私が売っているのと、言うように感じた。

 

そこで、プレゼントと言って、差し出すと、横から、道で作業をしていた男が、近づいてきた。

そして、その子の足に合わせて、少し小さいなーと、言うように聞こえた。

 

全く、私には、言葉が分からないのである。

しかし、意味が分かる。

 

確かに、小さかった。

だが、それ以上に大きなものはないので、諦めた。

 

残念だが、私は、また、歩き始めた。

 

一軒の家の前で、女の子二人が遊んでいる。

ガールと、声を掛けた。そして、すぐに、ぬいぐるみを取り出して、渡した。二人は、躊躇なく、それを受け取り、一人の子は、他の子供に声を掛けた。

すると、家からも、人が出てきた。

 

そこで、私は、バッグを開けて、中身を見せた。

必要ですか、と、手を差し出した。

 

すると、すぐに、隣近所から、人が出て来る。

赤ん坊を抱いた女も、来た。おばさん、おばあさんも来た。

 

そこで、少しばかり、衣服を差し出して、選ばせた。

 

皆、遠慮せずに、受け取る。

 

赤ん坊を抱いた女は、とても、喜んだ。

 

私は、写真を撮った。

そして、一人の子に、写真を撮ってもらった。

 

衣服の分量は、多くはなかった。

今回は、20キロを持参した。

飛行機に無料で乗せられる、ギリギリの量である。

 

そこで、差し上げた分量は、たいした量ではない。

そこを立ち去り、私は、暑いので、一度、ゲストハウスに戻ることにした。

 

更に、三時を過ぎて、少し空腹を覚えた。

あれほど、満腹だったのだが、緊張感による、ストレスなのであろうか・・・

 

ゲストハウスの、近くにある、麺屋に出掛けた。

もちろん、地元の人が食べる店である。

しばらく、様子を眺めていて、身振りで、欲しいものを、示した。

一万キップだった。

 

ちなみに、一ドルは、8800キップである。

100円が、8800キップとなる。

 

小型フランスパンの、サンドイッチが、一万キップであり、おおよそ、地元の人が食べる料金である。

一度の食事は、100円と少しである。

 

果物も買ったが、パイナップルの一個分が、5000キップである。

それも、食べやすく、皮を剥いて、均等に切り分けてある。

 

その夜だけは、ラオス料理のセットメニューをレストランで食べた。それは、なんと、10ドルだった。

その一度だけである、そんな高い料金を払ったのは。

しかし、それには、理由がある。