第2話
スタッフのアパート前に、出店のコーヒー店がある。
外なので、暑いのだが、朝のうちに、そこに行く。
挽きたてのコーヒーの、アメリカンを注文する。
20バーツ、60円である。
小さな椅子に、腰掛けて、タバコを、吹かしつつ、周囲を眺めている。
すぐ側では、バイクタクシーの、おじさんや、お兄さんがいる。
その奥さんや、家族が、時々出てきて、何やら、話をしている。
内容は、解らないが、何となく、懐かしい気分になる。
一度、夕方そこにいると、学校から戻った子供たちが、遊びはじめた。
そこで、私は、ぬいぐるみを、アパートから、持ってきて、手渡した。
とても、喜んだ。
その親たちも、とても、喜んだ。
決して、ぬいぐるみを、買える、ゆとりの無い生活である。
それで、その付近の人たちとの、付き合いが、はじまった。
別に、話をするわけではないが、皆さんと、挨拶をする、関係になる。
タイ語だったり、英語だったりする。
カラオケ店の、女の子たちは、皆、英語を話す。自然に覚えたものだろう。
彼女たちとも、昼間会うこともある。
夕方、丁度、一人の日本人男性が、コーヒー店に、やって来た。
最初は、挨拶だけである。
何となく、話しかけると、丁度、スタッフと同じアパートの部屋を、見学しに来たという。
彼も、タイ語を、学ぶために、その場所を探していた。
バンコクの、中心街、スクンウィットのホテルに滞在している。
チェンマイか、バンコクかを、考えていると、私に言った。
スタッフが、一度、チェンマイで、タイ語を、勉強していたので、紹介した。
いろいろと、話が弾んだ。
彼は、職を辞めて、タイに来たらしい。
職を辞めたというのは、もう、会社が、限界で、いつ、倒産しても、おかしくないと思い、その前に、やめて、新しい生き方を、考えた。
そういう日本人が多いんですよ
そうですか
何人も、会いました
二十代と、三十代ですね
会社が倒産したという人、多いです
確かに、そういう人が多くなっている。それで、安いタイにやって来たというが、実際、結構、お金を使う。
矢張り、スクンウィットなどにいると、どんどんと、お金が出てゆくのである。
夜の遊びなど、はじめたら、それはそれは、出てゆくだろう。
ところで、日本の何処ですかと、尋ねると、何と、横浜の、鶴見区在住である。
私は、西区です。
そうですかーーー
そうなると、また、話が弾む。
彼は、タイに来る前に、ベトナム、ラオスを回ったというので、実は、私も、これからラオスに行くと、言った。
ラオスでは、雨ばかりで、出掛けることが、少なかったらしい。
ベトナムは、ハノイであり、彼も、いろいろと、嫌な体験をした。
要するに、吹っかけられる。
バイクに乗る。
一ドルだと、言われて乗ると、ある所で、止まり、ここまでで一ドルだと、言われる。更に、また、止まり、ここまでで、一ドルだと、言われる。
また、タクシーからは、一度、降りたという。
降りたは、いいが、場所がどこか解らない。
呆然としていると、一人の日本人男性に声を掛けられて、助けて貰ったという。
その、男性が、衣服を配って歩く人だった。
ああ、こんなことをしている人、本当に、いるんだと、思った。
そこで、実は、私も、アジア各地で、慰霊と、衣服を配っていると、告げた。
アパートの一階に、インターネットがあります。
私の活動を見てくださいと、そこに、彼を案内して、ホームページを、見てもらった。
ハノイの、慰霊の様子を、見せると、彼も、その場所に出掛けたという。
ああ、その前の、スラムですね
そこで、衣服を差し上げましたよ
本当ですか・・・
暫く、彼は、ホームページを見ていた。
そして、彼の連絡先などを、教えて貰った。
もし、10月に、チェンマイに、滞在していれば、私たちは、コンサートをしますから、来てください。
その場所は、タイ語の、コースもある、場所である。
ラオスが、雨ばかりだというのが、気になったが、小一時間、彼と話をして過ごした。
日本人とは、あまり、話し合うことがないが、今回は、珍しいことだった。
日本人の姿は、多く見た。
スーパーなどでも、日本人が、買い物をしていた。
長期滞在している人も多いようだった。
タイでは、不思議なことに、日本人と、解っても、あまり話しはしないのである。
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