マニラの悲劇・衣服支援 第2話
暫くして、起き上がり、私は、ニーナに、これから、海岸通りと、街中に出て、支援をしたいと言うと、彼女は、夕方以降の方がいいと、言う。
人がいっぱいだし・・・
ああ、彼女は、顔が見られるのが、嫌なのである。
仕事が、仕事であるから。
そして、私は、どのように、運ぶかと、聞いてみた。
彼女は、お店に、バイクタクシーがあるから、それを、使うと言う。
じゃあ、幾らで、やってくれるか、聞いてと、言うと、彼女は、店に行くと、言って、部屋を出た。
夕方以降とは、まだ、十分に時間がある。
私は、もう一度、ベッドに、体を、横たえた。
眠ることは、なかったが、前回の支援した、人々を思い出していた。
海岸線の、植え込みに、暮らしていた家族は、どうしているのか。
確か、モンテンルパに行ったタクシー運転手は、皆、排除されたと言っていた。
すると、路地の中に、入っているのかもしれない。
また、前回、突然、支援をはじめなければならなかった、隣の地区のスラムの子供たちである。
今回は、そこまで、行くことは、出来ない。
残りは、海岸線と、街中で、無くなると、思った。
外が暗くなってきた。
そろそろ、ニーナが、戻る頃だが。
一時間以上たって、ニーナが部屋に来た。
そして、300ペソで、行くって、と、言った。
それは、高い。
私は、そのまま、言った。
ニーナは、黙っている。
ボッているのかもしれない。
いいよ、私、一人で、行くから。
そう言うと、ニーナは、あっさりと、あっそう、じゃあ、気をつけてと、言う。
そして、私は、今日は、もう、帰っていいよ。
明日、モンテンルパ、頼むねと、言った。
解った。じゃあね。
あっけなく、ニーナは、戻っていった。
いい、仕事だっただろうと、思う。
セックスせず、ガイドしての、仕事である。
ただ、2000ペソのうち、彼女の取り分は、おおよそ三割の、600ペソである。
私の記憶では、500ペソだと言ったように、思う。つまり、千円である。
売春婦は、皆、店側に、七割は、取られる。
だから、客から、チップや、物を買ってもらい、穴埋めをする。
しかし、私が、ポン引きのおじさんから聞いた話では、今は、昔と、違い、チップだって僅かなものさと、言っていた。
私が、荷物のバッグを、二つ持つと、ニーナと一緒に部屋を出た。
ホント、気をつけてなと、ニーナが言う。
フィリピナ独特の、日本語である。
私は、浴衣姿で、海岸に向かった。
ホテルから、真っ直ぐ歩く。
エルミタ教会を過ぎて、公園を通り、マニラ湾に、出る。
その道は、私の朝の、散歩道でもある。
海岸の、植え込みを探したが、誰もいない。
本当に、排除されたようである。
暫く歩いて、汗だくになった。
そして、方向を、街中にした。
いよいよ、繁華街である。
その途中で、花売りの女の子に、出会った。
そこで、バッグを開けて、彼女に合う、服を出して、渡した。
素直に、受け取る。
私には、見えなかったが、親か、誰かに、見せていたようだった。
私は、そのまま、通りに向かう。
すでに、赤ん坊を抱いた、女が、道端に座っていた。
物乞いである。
そこで、バッグから、幼児物を取り出して、渡した。
すると、向かい側から、おばさんが、飛んできた。
指差して、自分の子供が、道端で、寝ている姿を指した。
私は、向こう側に、渡ることにした。
寝ていた、男の子は、下半身が丸出しである。上着しか、着ていない。
早速、彼に合う、下着や、ズボンを出して、下半身に掛けた。更に、シャツなども、出していた。
気づいた時、周囲に、衣服の欲しい人が集っていた。
そこで、次々と、必要なものを、渡す。
子供から、大人まで、どんどんと、来る。
更に、それを、遠巻きで、人々が足を止めて、見ていた。
おおよそ、渡し終えて、私は、カメラを取り出し、周囲で、見守る人に、声を掛けた。写真を、撮ってくださいと。すると、一人の青年が、出て来た。
皆で、写真を撮る。
ありがとう。
すると、その青年が、どういたしまして、と、日本語で言う。
驚いた。
彼の、眼差しから、私に、対する興味が、見られた。が、そこに、留まっていては、人がまた、集うと、歩き始めた。
すると、顔見知りの、ポン引きのおじさんが、近づいて来た。
一度、食事を、ご馳走した、おじさんである。
私は、彼にも、スーツのズボンを渡そうとしたが、いらないと、言う。
すると、一人の女性が、私の、旦那が必要だと、それを、取っていった。
何人かの、ポン引きの人たちが、私の周囲に集ってきた。
日本に、働きに出たという人もいた。
ホテルに、戻る間に、ポン引きが、増えて、更に、私のバッグを持ってくれる人まで、現れた。
向こうは、皆、私を知っているのである。
私は、知らない。
ホテルまで、三人のおじさんが、着いて来た。
荷物を受け取り、ありがとうと、言うと、何かあれば、声を掛けてくれと、言う。
女も、あるから、である。
サンキューサンキューと、言って、別れた。
どっと、疲れた。
ドアマンが、夜の警備の人に交代していたが、彼も、私を覚えていた。
部屋に入り、残りの、物資を確認した。
もう、大半が無い。
残りは、明日の朝、あの公園でと、思った。
この日は、支援で、終わった。
|
|